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『天皇の遺伝子』を読んで ~皇位継承を考える(19)~

 今回は、蔵琢也『天皇の遺伝子 -男にしか伝わらない神武天皇のY染色体』(廣済堂出版 2006年 1600円)を紹介して、Y遺伝子説についてちょっとだけ考えてみたい。

 
 

 この本は、旧宮家の復帰による男系維持派の立場で真っ当な議論を展開している。まず、「天皇たるにふさわしい条件」として、
(1)父系をさかのぼると古代の天皇につながること(万世一系の条件)
(2)臣籍降下の(皇室以外のほか姓と家紋を同伴した)時間の短さ
(3)現代や近代の天皇との血縁の強さ(Y染色体以外の遺伝子共有率)
を挙げる。そして、明治帝と(旧宮家の)東久邇家系の男子のDNA共有率と、愛子内親王殿下の皇女のDNA共有率を比較したりする。(p.34)

 進化生物学者の蔵琢也氏によるこの本は、遺伝子の観点から男系維持の重要性を説いている。Y遺伝子の継承メカニズムについては八木秀次氏も詳しく説明しており、すでに御存知の方も多いと思うが、蔵氏の著書では、祖母-母-娘という純粋な女系継承はミトコンドリアDNAの継承に相当するという観点を含めて総合的に説明している。もう少しだけ踏み込んでY遺伝子説を理解したい人にはオススメである。ただし一般向きなので学問的には不足だろう。

 また、この本は単に生物学的な観点からの論述にとどまらず、皇位継承を歴史的な事象との関連でも論じている。

 第一に、一般的には苗字(姓)や家紋が男系継承で存続してきたことや、純粋な女系で継承されていたものとして“女紋”(p.91)が存在することなどを提示している。これは、「血のつながり、家系というのは19世紀までははっきりしなかったが、現在の知識からすれば遺伝子の系列のことである。」(p.214)とする著者の見解と並行するものであると言える。

 第二に、有識者会議によって父母どちらかがつながっていればよいと定義された「女系」(実際は双系または雑系)の天皇は歴史的には存在せず、直系継承のケースも歴史的には全継承ケースの半分しかなかったと論じる。そして、女性天皇の時期に異常事態が多いとして、孝謙天皇の例を挙げる。また、君主の正統性が低くなった時にいかに混乱が起こるかを、則天武后などの例で説明している。「原始母系社会論」を展開した文化人類学者もいて、それを論拠に古代は母系だったのだから初期天皇の男系は疑わしいなどという論陣をはる人々もいるが、「生物学者のあいだでは原始の人間は父系だったのではないかという意見が強い。少なくとも逆の意見は、系統分岐の推定といった進化論の初歩と矛盾しているため、無理がある」(p.101)。

 第三に、神武天皇などの初期天皇にも言及し、一つの学問的歴史観を提示する。私の見解(ファンタジー?)とは違うが、歴史学的には正当な論述である。

 蔵氏の本のおもしろいところは、DNAからみた日本人起源論に言及するところであり、「可能性は低いが」と断わってはいるが、天皇や古い神主家系はD型(モンゴルに極端に多い)の可能性があるとまで示唆している(p.207)。やがてY遺伝子の分析によって古代の謎が解かれていくだろうという。

 

 1963年生まれの蔵氏は、インターネットもよく見ているようである。彼は現在のネット潮流を“新「尊皇攘夷」運動”と形容している。そして、このような観点から有識者会議を批判し、日本の将来を占っている。この現状把握は、ネット上で男系維持を主張している人々とほぼ同じであろうと思われるし、このような見解が著書としてインターネットの枠を越えて一般人の目に触れることは喜ばしいことである。

 彼が見た掲示板(2ちゃんねるか?)の書き込みで印象に残っているのは、「未来の女帝や女系(多系)天皇の諡号(生前の行いを勘案し、死後に贈られる称号、贈り名)は、「破統」天皇だ」というものである(p.239)。私見としては、国民が勝手に決めたから即位したのに汚名を着せられるというのも可哀相なことだが、本人が皇位継承を断固拒否しないのならば、その責任は破統天皇自身にあることにもなろう。

 
 

**********

 
 この本を読んで私の立場から役立った記述をまとめ、私見を少々加えておきたい。この本を読む前に目を通しておくと理解しやすくなるだろう。私は生物学の専門家ではないので遺伝子の解説についてひょっとしたら間違っている記述があるかもしれないが、専門家からのご指摘をいただければ幸いである。

 

 人間の細胞は、細胞核と細胞質からなる。

 細胞核のなかには遺伝子と呼ばれる染色体が格納されている。その染色体は、DNA(デオキシリボ核酸)が対になって連なっており、この対になった塩基の組み合わせ(DNA配列)によって遺伝的性質が決まってくる。DNAは、父からのものと母からのものがほぼペアになって、二重に巻いた構造になっている。(Y染色体とX染色体は形が大きく違うのでペアとは言えない。)

 分子生物学などのミクロの生物学では、タンパク質を作るときの設計図になるような「明確な機能」をもつDNA配列のまとまった単位の一つ一つを「遺伝子」、そして全DNAの中でその遺伝子の存在する場所を「遺伝子座」と呼び、DNA配列の中で機能のほとんどない(と想定される)部分は遺伝子とは呼ばない(pp.51-52)。これ以降、遺伝子の数がいろいろと出てくるが、全DNA配列からみての数字なのか、明確な機能をもつ「遺伝子」に言及しているのかを区別しないと頭が混乱するだろう。

 科学の進展によって数値は変わってくるが、概数としてはDNA塩基が50億以下、遺伝子が10万以下である(p.54)。また、DNA塩基数は40億程度(p.51)、遺伝子数3万で(p.53)、それがほぼペアになっているので倍にして遺伝子数6万になる(p.54)という記述もしている。

Y染色体DNA塩基対は4000万~5000万で、人間の遺伝子(全DNA塩基数40億程度)の1%くらいをしめている。そのうち機能をもつ遺伝子は255個であり、Y染色体の全DNA配列の1~2%くらいである。(以上はp.69) ちょっと計算が合わないような気がするが、DNA塩基一つ(2ビット)だけでは意味をなさず、たとえば一つの英数字を表わすために1バイト(=8ビット)必要なように、1個の遺伝子を塩基セットとして数えているのだろう。概数でいって2600塩基対くらいで1個の遺伝子として機能しているのだろうか。←私は専門家ではないので、このあたりはよく分からない。

 Y遺伝子は、1遺伝子あたり500世代に1つの変異がある。すると、Y遺伝子は255個あるのだから、2世代に一カ所くらいはY遺伝子が変異していることになる。(以上はp.69) この突然変異の頻度を引き合いに出して、「Y染色体が受け継がれるといっても2世代で部分的な変化があるならば、Y遺伝子は不変で継承されているなどとは言えないだろう」という反論が出て来る。これを大きな変化と考えるのか小さな変化と考えるのか。それは、天皇の遺伝子を完全に調べて、さらに一般の日本人の遺伝子と厳密に比較しなければ明確な結論は出ないのだろう。

 ちなみに神武天皇から70世代後の今上天皇は、35/255=0.137ほどY染色体が変異している可能性があるのだろう。14%も微妙に変化しているから、もはや同一のY染色体とは言えないと見るのか、完全なる神様が14%ほど傷ついたと見るのか(^^ゞ その解釈は難しい。ちなみに旧宮家の今上天皇と同じ世代(18代離れている)の男子は、今上天皇と比べて9/255=0.035すなわち3.5%ほどY染色体が変異していることになる。それを誤差の範囲とみるか、別系統のY染色体になったと見るか。さらに清和源氏でみると、42代離れているとして21/255=0.082すなわち8.2%ほどY染色体が変異していることになる。同じものが少々傷ついただけと見るのか、内容的に別のものに変質してきたと見るのか、議論の分かれるところだろう。

 

 ミトコンドリアDNAの継承についても正確に理解しておかなければならない。ミトコンドリアDNAは、(一般的には)母親からしか継承されない。

ミトコンドリアのDNA配列は16,569個である。細胞核にある全染色体のDNAのおよそ20万分の1であり、Y染色体(のDNA塩基対)の3000分の1程度である。(以上はp.60) ただし、ミトコンドリアDNAは突然変異はなかなか起こらない。

 

 ところで、神武天皇のY遺伝子をもつ人は何人くらい存在するかという議論で、蔵氏は5万人~2000人くらいだろうと推定している(p.73)。私の見解は少し違う。孔子の男系子孫は大体75代から77代位の人が多く、その子孫が全世界に三百万人いるそうである。(→《男系絶対主義はシナ文明、女系容認が日本文明/日本とシナ・朝鮮では親族構造が異なる/シナ・朝鮮では同姓不婚 妻は夫の姓を名乗れない つまり男系絶対主義/男系絶対主義を神聖化することによる危険性 以下は同志、酒井信彦氏の講演「男系天皇絶対主義論の危険性―(マスコミ情報操作撃退作戦 2006年08月02日)》) 天皇も世代数でいけばだいたい70代くらいだから、数百万人くらいはいるのではないかと思う。なにしろ神武天皇氏族は源氏や平氏としても全国規模で(藤原氏とともに)支配階級を独占してきたので、孔子の子孫以上に繁殖機会に恵まれていたはずだからである。孔子家系の例を使って概数を推定をしてみると、各世代で男子が1.22倍に増えるとして75代で、1.2176≒200万(人)だから、孔子家系と同じ増加率で70代では、1.2170≒60万(人)となるのである。ちなみに増加率を1.23にすると、1.2370≒200万(人)である。

 

 Y染色体からみると、日本人の半数弱がO型(中国と東南アジアで大多数を占める)の弥生系で、残りの半分が縄文系で、3割弱のD型(日本以外ではチベットのみに多い)と1割強のC型(広く太平洋に分布)、数%のN型(フィンランドや東シベリアに多い)から構成されている(p.199)。p.201に図あり。しかし、どの国の人々は何型というように単純にわけられず、たとえば中国戦国時代に山東省一帯を支配した斉国の人骨のDNAを調べたところ、現在の東アジア人よりずっとヨーロッパ人に近かったという(p.76)。蔵氏は「天皇や古い神主家系は、D型の可能性あり」(p.207)としているが、古代にも民族移動はあったのだから、天皇はフィンランド人と同族などということもありうるのかもしれない。私は暫定的に、天皇はチベットの西端から中央アジアを回ってさらにモンゴル高原の北を通って日本にやって来たと想定している。(→《天皇はどこから来たか》)

 Y遺伝子のほかに言語の観点から日本人の起源を考えている点も興味深い。日本語の文法だけからすると日本語はアルタイ語系であり、朝鮮語とも近いように見える。しかし、基本単語が突然変異型で時間とともに変化すると仮定すると、日本語と朝鮮語は8000年も異なるという推定もある。これは、2000年前に弥生系渡来人が朝鮮からやって来たという想定とは一致しない(p.210)。もっとも、日本にはすでに縄文系の人々がいたので生活基本単語が半分ずつ残ったとすれば4000年くらいの距離になるのかもしれないが、私は言語学に関してもさほど詳しくないので明確なことは言えない。

 
 
 
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〔シリーズ:皇位継承を考える〕
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皇位継承を考える(2)男系維持の方策(その1)
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【2006/09/05 20:55】 皇室 | トラックバック(2) | コメント(3) |

コメント

遺伝学からの天皇男系説を、興味深く読みました。私の立場は、その問題も加味して、天皇家の問題は天皇家に任せよう、というものです。
【2006/09/08 16:03】 URL | 志村建世 #-[ 編集]
志村建世さん、TBありがとうございました。ブログ記事も読ませていただきました。また皇位継承関連の記事を書いたらTBしてくださいね。
【2006/09/10 11:34】 URL | 桜井和空 #cks3dOnk[ 編集]
【情報提供】
天皇陛下発言メモについて新事実がわかりました。
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?action=m&board=552019556&tid=lw9qbfc0bcrbb2grldbj&sid=552019556&mid=222243

を見てください
【2006/09/23 22:42】 URL | XXX #-[ 編集]

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