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児ポ法で犯罪者600倍に

 児童ポルノ製造の疑い逮捕者がでた。国会で児童ポルノ法改正案が見送られたことに関連して、警察が敢えて逮捕に踏み切ったのだろう。

「着エロ」DVD撮影で児童ポルノ製造の疑い/神奈川県警、4人を逮捕

(共同通信 2009/07/19)

 少女に露出度の高い水着を着せ、いわゆる「着エロ」のDVDを作成したとして、県警少年捜査課と戸塚署は19日までに、児童買春・ポルノ禁止法違反(提供目的の製造)の疑いで、4容疑者を逮捕した。
 
 逮捕されたのは、東京都世田谷区、芸能プロダクション社長川北満(43)、東京都渋谷区、ビデオソフト製造販売会社社長落合孝介(36)、東京都世田谷区、ビデオ監督兼カメラマン、藤原克巳(31)、東京都町田市、会社役員佐藤理恵(32)の4容疑者。
 
 逮捕容疑は、昨年7月14日から16日までの間、沖縄県内のホテルで、横浜市内に住む県立高校1年の女子生徒(16)に水着で過激なポーズをさせ、スタッフが体を触るなどして、わいせつな映像を撮影したとしている。4人とも容疑を認めているという。
 
 「着エロ」と呼ばれる映像を、児童ポルノと判断したのは県警で初めて。
 
 県警によると、少女は同プロダクションの所属タレントで、わいせつな映像を撮られるとは知らされていなかったという。昨年10月に「恥ずかしい映像を撮られた」と県警に被害を訴え出ていた。撮影されたDVDは、すでに約2500枚が販売されたという。

 県警に被害を訴え出たのが昨年10月なのに、警察は9カ月もの間いったい何をやっていたのだろうか。速やかに児童保護がなされるべきなのに、「恥ずかしい映像」が2500枚も販売されて被害が拡大してしまった後で逮捕するのでは対応がすでに遅いのではなかろうか。警察は、本当に児童を保護するつもりがあるのか。ここに、警察の対応のうさん臭さがある。また、今回逮捕に至った経緯に関しても、警察自身が改正を求めているから敢えてこの時期にこのような逮捕を行なったのか、あるいは別の団体が背後で圧力をかけたために、警察の怠慢を指摘されないように敢えて踏み切ったのかという疑問も残る。いろいろな可能性が考えられるが、いずれにせよ児童ポルノ禁止法の恣意的(というよりは政治的)な運用がなされている疑いはぬぐいきれない。このような状態での単純所持の処罰化は危険すぎる。

 このような撮影がなされた経緯に関しても、新聞ではよくわからない。そもそも去年の夏も児童ポルノ禁止法改正案が問題になっていたのだから、芸能プロダクションならば身分証明を求めているだろうし、少女の保護者にも責任がある。なかには少女のほうが姉の免許証を使って年齢詐称をしているケースもあるらしく、それで逮捕されたのではプロダクションのほうもいい迷惑である。一方、保護者の側も娘を芸能界に売り出すために敢えてきわどい作品にOKを出している場合もあるらしい。つまり、撮影者側を“一方的に”悪者にするのは間違いで、被害者のほうにも問題があった可能性を十分に検討しなければならない。

 「スタッフが体を触る」というフレーズは強制猥褻を連想させるが、ここには女性スタッフがひとりいた(佐藤理恵はたぶん女性)のだから、彼女が触っていた可能性もある。もしそうならば、少女にとっては男性に触られるよりもその時点では受け容れやすい状況であったかもしれないが、作品として成立した時点では、その演出の過激さに「恥ずかしさ」が増して被害届を出したという可能性がある。これはある種のだましであり、製作者側にも大きな責任はある。しかし、このようなだましは成人女性に対しても十分に行なわれている可能性があるのだから、少女に関してだけ取り締まってもあまり意味はない。むしろ肖像権を楯に出版差し止め訴訟などを起こしてもらうしかないと思うのだが、これも保護者が行なったり、警察や児童福祉士その他の代理人が速やかに行なえるような制度を作るべきだろう。

 芸能プロダクションといっても名前だけでうさん臭い会社はいくらでもあり、今回はそんな犠牲者であった可能性が高い。これは、その会社がどのような活動をしているのかをきちんと調べなかった保護者にも大きな責任のある事件である。また、学校教育によってそのような行為をしないように抑制する必要もある。児童に対して直接に教育する以外に、保護者にも教育をする必要があろう。学校の先生が直接に指導するのは難しい場合には、警察の少年課などを講師として招くようなことがあってもよかろう。

 児童保護を名目としている法律ならば、もっと製造と販売の段階での対応を考えるべきである。「恥ずかしいこと」をされた段階で児童はすでに取り返しのつかない被害を負っているとも考えられるのである。

 さて、現行の児童ポルノ禁止法では4人の逮捕となったが、もし児童ポルノ禁止法が改正されて単純所持に罰則が課されるとなると、今回の事件で2500人の潜在的犯罪者が生まれたことになる。潜在的犯罪者が実に600倍に膨れ上がる。そして、今回の逮捕劇でもまだ有罪が確定したわけではないのだから、ひょっとすると無罪の2500人の購買者がこの法律に振り回されることになる。たとえば購買者リストがあったとしたら、警察は一挙に何百人も逮捕できるだろう。製造・販売者も単純所持の購買者も同じに扱われるのがこの法律の改正案なのだから。そして、それだけの人々が人生を狂わされることになる。警察がどこでどのような映像を児童ポルノと認定するか分からないような状態では、警察の気まぐれで逮捕されることになりかねない。

 改正案推進者は、そんなDVDは買わなければいいと主張するのだろうが、DVDは中身を完全に確認してから買うわけではないし、買ったほうは出演者が18歳未満なのか確認のしようがない。しかし、できるだけ若い娘で、できるだけきわどい映像を見たいという性的好奇心は男には多かれ少なかれある。そして、巨乳で童顔の、どう見ても成人女性の映像を“少女”と錯覚して楽しむ人もいるだろう。ポルノは基本的に錯覚に基づいて成立している。女性がポルノを見れば、あんなことは現実の女性にはあり得ないと思うだろうし、正常な成人男性もまたそれを錯覚として楽しんでいる。つまり、それが幻想であり現実はそうではないと認識している。そのような幻想は男性に必要であり、女性もまた別の種類の性幻想を男性に対して持っているだろう。そのような性幻想自体を悪として処罰する法律は、男性の人間性を歪める。男女を問わずエロティックな幻想を否定する社会が神経症をつくるというのは精神分析の見解である。

 かくして、奇妙に性的に潔癖な社会をつくって男性の精神・性欲にストレスをかけるよりは、男性の精神・性欲はそのままに、女性の被害ができるだけ少なくなるような社会的方策をとるべきである。そのためには、児童が被害を受けないような教育と、保護者の監督責任の強化と、被害が発生した場合の速やかな対処と、被害者ケアの充実を図るべきである。

 ところで、新聞ではDVDのタイトルなどは明示されていないが、おそらく裏では情報が流れて高値で取引されたり、コピーが出回ったりしているだろう。児童ポルノと認定されたことでかえって当人の被害が拡大するということはありうる。性的好奇心がなくても、社会的好奇心が人々をそのDVDに殺到させるということがありうる。そして、児童ポルノ認定されることで、モデルがかえってポルノ女優の社会的烙印を押されてしまう結果になる。この点でも、下手に社会を騒がせて関心を集めてしまうのは慎むべきではないかと思う。

 
 
 
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