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福田首相が8月1日に内閣を改造した。改造せずにズルズルと来年の任期満了の総選挙までいくのかと思っていたが、意外や意外、素早い改造であった。これからまた国会が開かれれば野党からの批判が予想されるのだが、この改造人事だとサプライズが全然ない代わりに、攻めるほうも何を攻めたらいいのか分からず、旧態依然の“批判ごっこ”となって国民もしらけるだろう。
手堅くやっているなというのがこの改造人事の第一印象である。読売新聞の調査を例外として内閣支持率もたいして上がっていないようだが、おそらく福田首相はそれは眼中になかったと思われる。もし支持率を気にしているようなら今年の年明け早々に改造していたはずである。また、閣僚の年齢や派閥均衡も一切気にしていなかったと思われる。重要ポストにはベテランが返り咲いて、むしろ昔の自民党に戻ったという印象も少しだけある。
目立って変わったところが見られないので、これではわざわざ内閣を改造する意味がないのではという意見もあろう。しかし、目立ったことをせずに機が熟するのを待つという、福田流の布陣を敷いたように思える。
一つは、消費税増税路線の転換に向けて、経済財政担当相に与謝野氏、財務省に伊吹氏を登用したことだろう。すぐには消費税増税はするまい。ただ、両者の“顔”を出しておくことで、いずれ消費税増税は不可避であるとの印象を国民の間に着実に付けていくと思われる。ところが福田首相は、まずは政府の無駄を排除することと景気対策をしなければという建前で、増税しそうでしないという政権運営をしていくだろう。「いずれ消費税を上げなければ……」とぼやき続けるのが、この内閣の仕事である。
もう一つは、麻生氏を幹事長に起用して、選挙の顔を確保したということだろう。いわゆる“上げ潮派”は、旧来の自民党の路線で動こうとしているので、この時代には政策の効果が出ないと思われる。麻生氏の場合には、むしろ未来の活力を模索していこうとしているので、これは即効性はないが新たな風の胎動を刺激できるかもしれない。ただし、麻生氏の頭の中には具体的なビジョンはなく、ただ雰囲気を作っている内に何かが出てくるのだろうという戦略なので、新たな風の芽を摘み取らないような政策を模索すべきである。
野田聖子氏を消費者問題担当相に据えたことは、実質的にはほとんど意味がないだろうと思う。ただ、小泉路線から排除された人物の復活という点と女性閣僚という点でマスコミに注目してもらいやすくなるし、「女性の視点」というフレーズは消費者問題を取り上げるのには有利に働く。ということで、福田内閣が消費者目線でやっているというパフォーマンスのためには役立つ登用と思われる。だが、実際にどれだけの実質的な効果を上げられるのかは非常に疑わしい。
さて、タイムスケジュールとして最も気になるのは新テロ特別措置法の延長問題である。おそらく民主党が反対するだろうから、また衆議院三分の二で再可決するという形になるのだろう。だから、この延長法案を通すまでは解散はない。問題は何年延長するかである。来年の衆院総選挙で与党が議席の三分の二を獲得できないのは自明であり、一年延長ということであれば、来年暮れから再来年の初めには衆院再可決という裏技はとれずに、“ねじれ国会”が本当の姿を現わす。再来年の参院選で与党が参議院の過半数になれないかぎり、日本は国際社会による「テロとの戦い」から離れてしまうことになる。ただし、もしかりに政権交代が実現するとなると、民主党が平気で態度を翻して「テロとの戦い」に参加するかもしれない。民主党の反対攻勢は信用できない。
町村官房長官を留任としたのも手堅かったと思う。口が達者というか、人を丸め込むのが上手いというか(^^ゞ、首相のスポークスマンとしては内閣の小さな失敗をうまく切り抜けるのに有能な人物だと思う。ただ、福田首相のもとで事なかれ主義に堕する危険性があって、その点は右寄りの人間として注視していきたい。竹島問題での及び腰の姿勢は、ちょっと考えものである。これについてはまた別の記事にしようかと思っているので詳しくは述べないが、町村氏は右寄りの人々から見放される可能性が高まったと言える。
ネット上では右寄りの人々が特殊な言論を展開しているが、彼らには、“ハニー谷垣”が国土交通相に就任したことも警戒感をもって迎えられるのではなかろうか。中国の乙姫様に尖閣諸島を龍宮城としてプレゼントしてしまうんではなかろうか・・・と。(笑) もちろんこれは冗談である。だが、それ以前の国土交通相が公明党から出ていて、こちらも某支持団体が裏で中国と結んでいるのではないかとネットではもっぱらの噂だった。我々は国土を“土のうえ”と考えがちだが、日本国は周辺海域を含めて“国土”だと考えていくべきであり、国土防衛という観点からも“海の道”のあり方にも十分に注意を払ってもらわねばならない。町村官房長官の竹島問題に関するコメントを見ていると、どうもそのへんが気になって仕方がない。
おそらく福田首相は、大きな問題が出て来ないかぎりこの布陣で来年の総選挙までやっていくのではないかと思う。
=2008/08/04付 西日本新聞朝刊= 自民党の古賀誠選対委員長は3日、福岡県大牟田市で開いた支持者向けの集会で講演。衆院解散の時期について「この前までは暮れから年明け早々と言っていたが、私の発言はまた、『任期満了に限りなく近くなるのではないか』に変わらざるを得ない」と述べた。最近の発言を大幅に軌道修正し、再度、衆院議員の任期満了となる来年9月に近い時期が望ましいとの考えを示した格好で、与党内に波紋を広げそうだ。 古賀氏は、発言修正の意図として「(早期の)解散になれば大変危険な状況だ。福田改造内閣は経験と力量が豊富。この内閣で、景気対策や社会保障の基本政策を順序よく出していくので、福田カラーが国民の心の中に染み通っていくだけの時間がほしい」と強調。その上で「国民の皆さんに自民党や政治への信頼が生まれたとき、審判を仰いだ方がベストだ」と語った。 古賀氏は衆院解散について、任期満了に近い時期が望ましいとの立場を取り続けてきたが、今年7月に「(来年の)通常国会冒頭か、予算案成立後なら3月末か4月に入ってからが一つのめど」と発言し、態度を一変。その後も、年内解散を求める公明党に同調し、年末年始の解散に言及してきた。 |
どうせこの改造内閣もたいして目立ったことをしないだろうから、「国民が苦しんでいるのに何もやっていない!」とマスコミが騒ぐことは間違いない。しかし福田首相は、馬耳東風というか老人性難聴というか老人力というかで、二宮尊徳よろしく黙々と《田草とり》を続けていくだろう。この改造で約一年分の兵糧は蓄えたという感じになっているのではないかと思う。福田内閣は攻めの内閣ではない。完全に守りの内閣である。本人は「改革」という言葉をさかんに使うだろうが、それは大変革の意味ではなく“小さな手直し”の意味である。目新しいことで騒ぎ立てるのを商売としているマスコミは、その点を理解していないに違いない。だから、“よく分からない内閣”として不満をくすぶらせるばかりで一年が過ぎていくだろう。
そんなマスコミを尻目に、自民党はこの一年でどう自らの態勢を建て直すかが課題となる。この一年の間に党としての新たなビジョンや方向づけを国民にアピールしていかないと、たぶん来年の衆院総選挙で惨敗だろう。ま、自分が当選することに奔走しているようでは自民党の先行きは先行きは暗い。
公明党とうまく協調できないことによる“福田おろし”はありうる。しかし、福田氏を遥かに超える人物を次の総裁に選出できる目途が立たなければ、首のすげ替えは墓穴を掘るようなものである。自民党内にあとの体制がしっかりと整ってくれば、たぶん福田氏は総理の地位には固執しないだろう。しかし私の予想では、その新体制が作り出せないままにズルズルと任期満了までこの内閣がつづくのではないかと思う。そして、選挙で生き残った自民党議員でやっと新体制を構築していくのではないかと思う。
マスコミは内閣の動きを追いながら解散総選挙を予想していこうとするのだろうが、むしろ自民党内でどのような動きがあるかに注目していると、選挙の時期やこれからの政界が見えてくるはずである。
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