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本の紹介『DNAでたどる日本人10万年の旅』

崎谷満『DNAでたどる日本人10万年の旅―多様なヒト・言語・文化はどこから来たのか?』昭和堂.2008年



 私がこの本を薦めるのは、日本人が血統的には多様な民族から成り立っていることを特に右翼の人々に認識してもらいたいからである。もちろん「文化的には単一民族だ」という考え方はできる。しかし、まるで単一の血統であるかのような言い方は、むしろ無知をさらけ出しているだけのように見えてしまうからである。

 特に「天皇が父で臣民はすべてその赤子」という戦前の教育を受けた人々は、まるですべての日本人が天孫族(天照大神の孫のニニギノミコトの子孫)であるかのような、少なくともそれと藤原氏と少数の被征服民から成っているかのような錯覚を起こしているのではないかと思う。この本は、男だけに伝わるY染色体を調べた本である。つまり、日本には少なくとも数種類の男系血統が存在していることになる。

 もちろん天皇および天孫族のY染色体が何なのかは不明だが、日本人のうちで最大のD2系統のヒト集団でも全体の4割程度の人口である。論理的にいって、天孫族は最大でも日本の人口の4割しかいない。もちろん実際にはそれよりもはるかに少ないだろう。戦前の教育は、日本人のすべてが天皇家の男系子孫とまでは主張していなかっただろうが、そんなふうに誤解している人もいまだに多いのではないかと思う。むしろ多様な民族を日本列島内でまとめてきたのが天皇家だと考えたほうがいい。

 天照大神まで遡れば、最初から日本列島に天孫族が住んでいたことになるのだろうが、神武天皇は紀元前7世紀の人物である。日本列島はもっと前から人間が住んでいる。しかも何種類かの民族がいたと思われる。以下にその概要を書いておく。


 C系統のヒト集団は日本にわずかに存在する。そのうちC3系統はシベリアからアメリカ大陸まで渡っていった。この系統は旧石器時代におけるシベリアの細石刃文化と関連するヒト集団らしい。この系統は、日本列島における旧石器時代依頼の先住系ヒト集団を構成していると考えられている。また、日本列島の南方とくに太平洋側にはC1系統が少しばかり存在する。

 D系統は、新石器時代の縄文文化の担い手だろうとされている。ちなみに、日本列島のD系統はD2系統とごくわずかなD1系統だが、チベットにもD系統(ただしD1とD3)の高い集積があるそうだ。世界の他の地域にはほとんど存在しないようだから、日本民族とチベット民族は遠い兄弟民族と言えるかもしれない。ところが今、彼らは中共の弾圧によって子孫を残せずに(血統上の)民族として滅びつつある。兄弟が滅んでいくのを日本人は見過ごしていいのか。(ちなみに、チベットでもインドでも男系血統で民族が決まるので、漢民族男性とチベット民族女性で生まれた子は漢民族である。)

 O系統は、弥生時代以降に朝鮮半島を経由して流入したヒト集団と想定され、細かくいうとO2b系統とO3系統がある。O2b系統は朝鮮半島に非常に高い集積が見られ、日本列島で3割程度の人口を占めているようだ。そして、朝鮮半島のみならず長江文明との関連も考えられている。O3系統は、日本列島で2割程度の人口を占めているようだ。また、黄河文明・漢民族と関連するといわれるO3e系統は、東京で1割弱いる。しかしミャオ族と関連するO3c系統は日本にはほとんど見られない。

 N系統は、シベリア北西部と北欧(とくにウラル系)に高い頻度で存在するが、日本列島にもわずかに存在する。


 興味深いのはアイヌ民族で、D2系統が8割程度、C3系統が2割程度いる。アイヌ民族といっても血統的には単一ではない。

 また、琉球といっても北琉球の沖縄本島と南琉球の八重山諸島では分布が異なっている。北琉球では本州と同じくD系統が4割程度でO2b系統が3割程度いるが、南琉球ではD系統が4%程度しかいないのにO2b系統が7割近くいる。

 ひところアイヌ民族と琉球民族は日本民族に押しやられた同一先住民族などという説があったが、これはDNA分布の観点からは根拠をもたないことになる。

 おおまかに言うと、日本列島にはQ系統およびC3系統のヒト集団が狩猟採集民として後期旧石器時代に入ってきて、そのあとD2系統が入ってきて縄文文化を構成し、それよりやや遅れてC1系統が南方からやって来た。そのあとにO系統が朝鮮半島から流入して弥生以降の文化を形成したと考えてよいのだろう。

 これは私の勝手な想像だが、アイヌ民族にD2系統が多いのは、アイヌ討伐に向かった大和朝廷の男たちがアイヌ民族の女子を片っ端から孕ませて、そのまま彼女らが子を連れて北方へ移住したためにD2系統が多くなったのではあるまいか。男の下半身は別人格だからねぇ~。ヾ(^^; オイオイ 分かっているのは現在のDNA分布だけであって、どのようにして現在このような分布になったのかは、あくまでも世界各地のDNA分布から推測して再構成しているにすぎないのだから、各自でいろいろ想像を巡らせてみるのも面白いかもしれない。

 

 ここでは私の興味のあるところだけまとめたが、この本は、他に言語の多様性や文化の共存など、面白い観点から分析がなされている。今はひょっとしたら文化的には日本民族という単一民族と考えてもよいのかもしれないが、それでも最初は日本列島は多様な民族が共存した“人種のるつぼ”のような状態だったのだろう。DNA研究という学問に照らして日本人を分析すると、極端な右翼や左翼の妄言が焙りださせてくるのではないかと思う。そして、本当にしっかりした保守主義を目指すのなら、このような学問的成果にもきちんと耐えうる思想を作っていかなければならないことになろう。

 
 
 
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【2008/05/05 07:38】 推薦本 | トラックバック(0) | コメント(0) |

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