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年金着服における罪と罰

 地方自治体が刑事告発を見送った論理に、少々理解できないところがある。それは“罪と罰”の区別がついていないからではないかと思われるので、今回はそれについて論じてみたい。

NHKより

 田村市では今月2日に社会保険庁などからの厳正な対応を求める文書を受けて刑事告発などの対応をすべきかあらためて検討した結果、すでに懲戒免職になり、社会的制裁も受け、被害金額も弁済されているとして元課長の刑事告発は行わない方針を決めました。
 
 これについて田村市の冨塚市長は、「過去の事例を再度罪に問うのであれば、年金以外の横領などについても罪に問わなければ不公平になる。市町村が年金の確認作業に追われているときに作業の遅延を招くような社会保険庁の通知は筋違いではないか」話しています。

 ということだそうだ。(コチラより引用)

 「懲戒免職」は、市が行なった罰である。「社会的制裁」は、市の罰に付随した社会的罰である。「被害金額も弁済」は、損害賠償である。さて、罰がなされる場合には、それ以前に不正等が認定されなければならない。それを認定した主体は市である。そして、このような罰は、私企業が行なう懲戒免職と同じ性質であると言える。

 ここで私が敢えて「違法」ではなく「不正」と表現するのは、それが必ずしも裁判所が認定した違法行為ではないからである。違法かどうか、この件の場合は刑事犯かどうかは、最終的には裁判所の判断によって決まる。だから、裁判所の有罪判決がないかぎり形式上は無罪なのである。しかし、罰を与えるためにいちいち不正行為を違法として裁判所に判決を出してもらう手間を省くために、ないしは前科がつかないようにと配慮して、自ら罪を認めた者に対して便宜的に懲戒免職などの罰のみを与えている。懲戒が、いわば有罪判決の代わりである。もしも犯罪の有無を争うことになれば、不当解雇として逆に使用者側が訴えられるだろう。

 さて、われわれ国民が問題にしているのは、「ドロボーしても罪にならないのか」という点である。さらに言えば、「犯罪行為が発覚したら、他の一般人なら罪になるのに役人だと罪にならないのは不公平ではないか」という点である。“罰”よりもまず“罪”を問題にしているのである。国民は、横領職員はもっとはっきりと公に罪を問われるべきであり、市役所のなかで不正認定と損害賠償でコソコソ処理しておしまいにするのは納得がいかないと言っているのである。

 市役所は公的な機関だから、その職員の不正は公的に問われるべきである。一般的な事務に関してはその地方だけの問題かもしれないが、国民は年金制度を市町村レベルではなく国家レベルの制度と認識して保険料を払っているのだから、国家レベルで(すなわち裁判所で)不正が問われるべきだろう。もう少し具体的なイメージでいえば、会社の金庫からネコババしたのではなく国の金庫からネコババしたようなものだから、社会的な罪はずっと重いのではないか、ということである。

 裁判所によってはっきりと「ネコババしたあなたは悪い」(すなわち有罪)という判決が下されるべきである。そして、有罪だと判定されたあとで、はじめてどのような罰が適切かが議論される。ここで、すでに弁済しているから“無罪”という論理は当たらない。なぜなら、横領罪は横領した不正行為 にあるのであって、必ずしもそれによって与えた損害 にあるのではないからである。10円の横領でも罪は罪である。だが、100万円の横領が1万円の横領の100倍の罪になるわけではない。つまり横領罪は、いくら取ったかにかかわらず、「他人の金をポケットに入れてしまうのはいけないことだ」ということが認定されるわけである。

 市長が刑事告発を見送るというのは、まさしく「他人の金をポケットに入れても問題はない」と言っているようなものであり、市長ぐるみで法律を軽視するのかと言いたくなる。場合によったら「“ネコババ問題なし”認識の市長は辞めろ!」というリコール運動が起こってもおかしくはない。また、横領が発覚した時点で刑事告発しなかったこと自体が問題だとも考えられる。まあ、そこまで使用者側に鬼になれとは言えないだろうが。

 裁判所で罪が確定したあとで、罰をどうするかが判断される。だが、すでに懲戒免職という罰が与えられている。これは所属組織レベルのペナルティだが、罰金を払ったり刑務所に入れたりする罰の代理と見なすこともできよう。したがって、執行猶予のような形にしてしばらく謹慎させれば罰としては十分なのだろう。ネコババする奴は叱られて組織から排除されるというのは合理的な罰であり、それ以上の重い罰は時として不当かもしれない。

 次に、社会的制裁の問題である。懲戒免職だから新たに職が見つからないという意味だろうか? それはまったく個人の問題である。どんな職業でも、懲戒免職になれば再就職は困難になる。だが年金横領は、一般個人の問題にとどまらず社会的問題でもある。公共的な制度の信頼を揺るがしたのだから、より公的な非難が向けられて当然だろう。つまり、公務員という立場に鑑みてまだ十分には社会的制裁を受けていないとも言えるので、刑事告発によって社会的制裁が追加されることは合理的である。

 「過去の事例を再度罪に問うのであれば」という市長の想定は間違いである。少なくとも今はじめて裁判所によって罪に問われる可能性が出てきたのであり、これまでは罪の公的認定をせずに勝手に罰しただけである。そのような処分は、実質的に罰したのだから公的には罪にならないように穏便に済まそうとした結果である。だが、今国民が騒いでいるのは、そのように穏便に済ますと倫理そのものがなし崩しになるのではないかという問題意識からである。少なくとも公的立場(ないし公的仕事)をしている人間は、不正を犯したら公的に罪を問われるべきだ、と国民は言いたいわけである。

 「年金以外の横領などについても罪に問わなければ不公平になる。」との市長の結論もよく理解できないが、この横領職員に関して他の罪も問うべきというのなら、是非やってもらいたいものだ。しかし、横領罪はひとまとめで済むのではないかと思う。つまり、どれだけ盗んだかではなく盗むという行為形式が問題なのだから。そして、懲戒免職という形で罰が実質的にはほとんど完了しているのだから。他の職員にも横領があって不公平などというのなら、他の職員も刑事告発するのが筋である。だが、年金などのように国家レベルの公的な制度に関する横領でないならば、単にその市の公共性に対する信頼を失わせた罪ということで、必ずしも国家レベルの罪(刑法に定められた罪)に問わなくてもいいとは思うが。←私自身も甘いなあとつくづく思う。(-_-;

 「市町村が年金の確認作業に追われているときに作業の遅延を招くような社会保険庁の通知は筋違いではないか」という反論も筋違いで、確認作業をする前に、事の重大性に鑑みて刑事告発しなかった市に責任があるのではないか。自分のところに不正職員が出た時点で、年金が正しく管理されているかどうか確認作業に入るのが筋であり、社会保険庁に言われる前からやっておくべきことだったと言える。つまり市のこれまでの職務怠慢を棚に上げて、忙しいから刑事告発しないというのは筋違いにもほどがある。まあ、夏休みの宿題が溜まってヒーヒー言っている小学生のようなものだ。

 以上、“罪”と“罰”の区別をしっかりした上でこの問題は議論されるべきだろう。“穏便に”とか“温情で”というような理由に基づく処理で済ませられるのは、当事者たちがルールをルールとして正しく認識し、しかもルール違反を悪いものと認識しているかぎりでである。現在のようなルールに対する無自覚とルール違反に対する軽視が横行している社会状況では、少しばかり箍(たが)を締める必要がある。

 
 
 
 
 
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【2007/10/09 12:56】 政治 | トラックバック(1) | コメント(1) |

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